大杉 栄

奴隷根性論

一

斬り殺されるか、焼き殺されるか、あるいはまた食い殺されるか、いずれにしても必ずその身を失うべき筈の捕虜が、生命だけは助けられて苦役につかせられる。一言にして言えば、これが原始時代における奴隷の起源のもっとも重要なるものである。

かつては敵を捕えればすぐさまその肉を食らった赤色人種も、後にはしばらくこれを生かして置いて、部落中寄ってたかって、てんでに小さな炬火をもって火炙にしたり、あるいは手足の指を一本一本切り放ったり、あるいは灼熱した鉄の棒をもって焼き焦したり、あるいは小刀をもって切り刻んだりして、その残忍な復讐の快楽を貪った。

けれどもやがて農業の発達は、まだ多少食人の風の残っていた、蛮人のこの快楽を奪ってしまった。そして捕虜は駄獣として農業の苦役に使われた。

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