大杉 栄

鎖工場

夜なかに、ふと目をあけてみると、俺は妙なところにいた。

目のとどく限り、無数の人間がうじゃうじゃいて、みんなてんでに何か仕事をしている。鎖を造っているのだ。

俺のすぐ傍にいる奴が、かなり長く延びた鎖を、自分のからだに一とまき巻きつけて、その端を隣りの奴に渡した。隣りの奴は、またこれを長く延ばして、自分のからだに一とまき巻きつけて、その端をさらに向うの隣りの奴に渡した。その間に初めの奴は横の奴から鎖を受取って、前と同じようにそれを延ばして、自分のからだに巻きつけて、またその反対の横の方の奴にその端を渡している。みんなして、こんなふうに、同じことを繰返し繰返して、しかも、それが目まぐるしいほどの早さで行われている。

もうみんな、十重にも二十重にも、からだ中を鎖に巻きつけていて、はた目からは身動きもできぬように思われるのだが、鎖を造ることとそれをからだに巻きつけることだけには、手足も自由に動くようだ。せっせとやっている。みんなの顔には何の苦もなさそうだ。むしろ喜んでやっているようにも見える。

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