岡本 かの子

鮨

東京の下町と山の手の境い目といったような、ひどく坂や崖の多い街がある。

表通りの繁華から折れ曲って来たものには、別天地の感じを与える。

つまり表通りや新道路の繁華な刺戟に疲れた人々が、時々、刺戟を外ずして気分を転換する為めに紛れ込むようなちょっとした街筋――

福ずしの店のあるところは、この町でも一ばん低まったところで、二階建の銅張りの店構えは、三四年前表だけを造作したもので、裏の方は崖に支えられている柱の足を根つぎして古い住宅のままを使っている。

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