岡本 綺堂
半七捕物帳
一
ある日、例のごとく半七老人を赤坂の家にたずねると、老人はあたかも近所の碁会所から帰って来た所であった。
「あなたは碁がお好きですか」と、わたしは訊いた。
「いいえ、別に好きという程でもなく、いわゆる髪結床将棋のお仲間ですがね」と、半七老人は笑った。「御承知の通りの閑人で、からだの始末に困っている。といって、毎日あても無しにぶらぶら出歩いてもいられないので、まあ、暇潰しに出かけると云うだけの事ですよ」
岡本 綺堂
一
ある日、例のごとく半七老人を赤坂の家にたずねると、老人はあたかも近所の碁会所から帰って来た所であった。
「あなたは碁がお好きですか」と、わたしは訊いた。
「いいえ、別に好きという程でもなく、いわゆる髪結床将棋のお仲間ですがね」と、半七老人は笑った。「御承知の通りの閑人で、からだの始末に困っている。といって、毎日あても無しにぶらぶら出歩いてもいられないので、まあ、暇潰しに出かけると云うだけの事ですよ」