芥川 竜之介

長崎小品

薄暗き硝子戸棚の中。絵画、陶器、唐皮、更緲、牙彫、鋳金等種々の異国関係史料、処狭きまでに置き並べたるを見る。初夏の午後。遙にちやるめらの音聞ゆ。

久しき沈黙の後、司馬江漢筆の蘭人、突然悲しげに歎息す。

古伊万里の茶碗に描かれたる甲比丹、(蘭人を顧みつつ)どうしたね? 顔の色も大へん悪いやうだが――

蘭人、いえ、何でもありませんよ。唯ちつと頭痛がするものですから――

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