芥川 竜之介

三つの宝

一

森の中。三人の盗人が宝を争っている。宝とは一飛びに千里飛ぶ長靴、着れば姿の隠れるマントル、鉄でもまっ二つに切れる剣――ただしいずれも見たところは、古道具らしい物ばかりである。

第一の盗人 そのマントルをこっちへよこせ。第二の盗人 余計な事を云うな。その剣こそこっちへよこせ。――おや、おれの長靴を盗んだな。第三の盗人 この長靴はおれの物じゃないか? 貴様こそおれの物を盗んだのだ。第一の盗人 よしよし、ではこのマントルはおれが貰って置こう。第二の盗人 こん畜生! 貴様なぞに渡してたまるものか。第一の盗人 よくもおれを撲ったな。――おや、またおれの剣も盗んだな?第三の盗人 何だ、このマントル泥坊め!

三人の者が大喧嘩になる。そこへ馬に跨った王子が一人、森の中の路を通りかかる。

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