芥川 竜之介

長崎

菱形の凧。サント・モンタニの空に揚つた凧。うらうらと幾つも漂つた凧。

路ばたに商ふ夏蜜柑やバナナ。敷石の日ざしに火照るけはひ。町一ぱいに飛ぶ燕。

丸山の廓の見返り柳。

運河には石の眼鏡橋。橋には往来の麦稈帽子。――忽ち泳いで来る家鴨の一むれ。白白と日に照つた家鴨の一むれ。

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