泉 鏡花

朱日記

一

「小使、小ウ使。」

程もあらせず、……廊下を急いで、もっとも授業中の遠慮、静に教員控所の板戸の前へ敷居越に髯面……というが頤頬などに貯えたわけではない。不精で剃刀を当てないから、むじゃむじゃとして黒い。胡麻塩頭で、眉の迫った渋色の真正面を出したのは、苦虫と渾名の古物、但し人の好い漢である。

「へい。」

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