泉 鏡花
吉原新話
一
表二階の次の六畳、階子段の上り口、余り高くない天井で、電燈を捻ってフッと消すと……居合わす十二三人が、皆影法師。
仲の町も水道尻に近い、蔦屋という引手茶屋で。間も無く大引けの鉄棒が廻ろうという時分であった。
閏のあった年で、旧暦の月が後れたせいか、陽気が不順か、梅雨の上りが長引いて、七月の末だというのに、畳も壁もじめじめする。
泉 鏡花
一
表二階の次の六畳、階子段の上り口、余り高くない天井で、電燈を捻ってフッと消すと……居合わす十二三人が、皆影法師。
仲の町も水道尻に近い、蔦屋という引手茶屋で。間も無く大引けの鉄棒が廻ろうという時分であった。
閏のあった年で、旧暦の月が後れたせいか、陽気が不順か、梅雨の上りが長引いて、七月の末だというのに、畳も壁もじめじめする。