海野 十三
壊れたバリコン
なにか読者諸君が吃驚するような新しいラジオの話をしろと仰有るのですか? そいつは弱ったな、此の頃はトント素晴らしい受信機の発明もないのでネ。そうそう近着の外国雑誌にストロボダインという新受信機が大分おおげさに吹聴してあったようですね。しかし私は余り感心しないのですよ。結局ビート受信方式の一変形に過ぎないじゃありませんか。
ヤアどうも、君に議論を吹っかけるつもりじゃ毛頭なかったのですがネ、つい面白い原稿だねのない言訳に一寸議論の端が飛び出して来たという次第なのですよ。――
ホウ、君はそこの床の間にポツンと載っている変な置物に目をつけておいでのようですな。そうです、君の仰有るとおり、それは加減蓄電器の壊れたものなのですよ。半分ばかり溶けてしまって、アルミニュームが流れ出したまま固っているでしょう。これは何かって言うんですか?
いや実はネ、それについて一つ、取っておきの因縁ばなしがあるんですがネ、今日は思い切って、そいつを御話してしまうことに致しましょうか。