折口 信夫
文学を愛づる心
文學を愛でゝめで痴れて、やがて一生を終へようとして居る一人の、追憶談に過ぎぬかも知れない。
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文學をめでゝ愛で痴れて、而も其愛好者の一生が、何の變化も受けなかつたものとすれば、その文學がよほど、質の違つたものだつたと考へてよい。さうでなければ、その人が變質的に隨分強靱な心を持つてゐたと言ふことになる。所謂文學の惡影響と言ふこともあるにはある。此は考へて見ねばならぬことだ。文學を愛して居ながら、ちつともわるい感化を蒙らなかつたと言ふ人は相當あつて、紳士として申し分のない生活をして居る。かう言ふ人の行き方は、堅實な態度と言はれて來て居る。
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