大阪 圭吉

三の字旅行会

一

赤帽の伝さんは、もうしばらく前から、その奇妙な婦人の旅客達のことに、気づきはじめていた。

伝さんは、東京駅の赤帽であった。東海道線のプラット・ホームを職場にして、毎日、汽車に乗ったり降りたりするお客を相手に、商売をつづけている伝さんのことであるから、いずれはそのことに気がついたとしても不思議はないのであるが、しかし、気がついてはいても伝さんは、まだそのことについて余り深く考えたことはなかった。

なんしろ、一日に何万という人を、出したり入れたりする大東京の玄関口である。一人や二人の奇妙なお客があったとしても、大して不思議に思うほどのことはないのであるし、第一、一旦列車が到着したとなれば、もう自分のお客を探すことで心中一パイになってしまい、まったくそれどころではないのであった。だから伝さんが、その婦人客達のことについて考えこむようなことがあったとしても、それは精々、お客にでもあぶれた退屈な時くらいのものであった。

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