岡本 綺堂

半七捕物帳

一

ある時、半七老人をたずねると、老人は私に訊いた。

「あなたに伺ったら判るだろうと思うのですが、几董という俳諧師はどんな人ですね」

時は日清戦争後で、ホトトギス一派その他の新俳句勃興の時代であたから、わたしもいささかその心得はある。几董を訊かれて、わたしはすぐに答えた。彼は蕪村の高弟で、三代目夜半亭を継いだ知名の俳人であると説明すると、老人はうなずいた。

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