岡本 綺堂
影を踏まれた女
一
Y君は語る。
先刻も十三夜のお話が出たが、わたしも十三夜に縁のある不思議な話を知つてゐる。それは影を踏まれたといふことである。
影を踏むといふ子供遊びは今は流行らない。今どきの子供はそんな詰らない遊びをしないのである。月のよい夜ならばいつでも好さゝうなものであるが、これは秋の夜にかぎられてゐるやうであつた。秋の月があざやかに冴え渡つて、地に敷く夜露が白く光つてゐる宵々に、町の子供たちは往来に出て、こんな唄を歌ひはやしながら、地にうつる彼等の影を踏むのである。
岡本 綺堂
一
Y君は語る。
先刻も十三夜のお話が出たが、わたしも十三夜に縁のある不思議な話を知つてゐる。それは影を踏まれたといふことである。
影を踏むといふ子供遊びは今は流行らない。今どきの子供はそんな詰らない遊びをしないのである。月のよい夜ならばいつでも好さゝうなものであるが、これは秋の夜にかぎられてゐるやうであつた。秋の月があざやかに冴え渡つて、地に敷く夜露が白く光つてゐる宵々に、町の子供たちは往来に出て、こんな唄を歌ひはやしながら、地にうつる彼等の影を踏むのである。