折口 信夫
万葉集に現れた古代信仰
万葉集に現れた古代信仰といふ題ですが、問題が広過ぎて、とりとめもない話になりさうです。それで極めて狭く限つて、只今はたまに関して話してみます。
玉といへば、光りかゞやく美しい装飾具としての、鉱石の類をお考へになるでせう。又、万葉集で「玉何」と修飾の言葉としてついてゐるのは、その美しさを讚美した言葉だ、とお考へになるでせうが、多くの場合、それは昔からの学者の間違ひの伝承です。
我々が、神道の認識を改めねばならない時に当つて、それと関係の深いたまについての考察に、一つの別の立場を作るのも、思索上のよい稽古になると思ひます。万葉集に、
むらさきの 粉滷の海にかづく鳥。玉かづきいでば、わが玉にせむ(三八七〇)