黒島 伝治
橇
一
鼻が凍てつくような寒い風が吹きぬけて行った。
村は、すっかり雪に蔽われていた。街路樹も、丘も、家も。そこは、白く、まぶしく光る雪ばかりであった。
丘の中ほどのある農家の前に、一台の橇が乗り捨てられていた。客間と食堂とを兼ねている部屋からは、いかにも下手でぞんざいな日本人のロシア語がもれて来た。
黒島 伝治
一
鼻が凍てつくような寒い風が吹きぬけて行った。
村は、すっかり雪に蔽われていた。街路樹も、丘も、家も。そこは、白く、まぶしく光る雪ばかりであった。
丘の中ほどのある農家の前に、一台の橇が乗り捨てられていた。客間と食堂とを兼ねている部屋からは、いかにも下手でぞんざいな日本人のロシア語がもれて来た。