甲賀 三郎
支倉事件
呪の手紙
硝子戸越しにホカ/\する日光を受けた縁側へ、夥しい書類をぶち撒けたように敷散らして其中で、庄司利喜太郎氏は舌打をしながらセカ/\と何か探していた。彼は物事に拘泥しない性質で、十数年の警察生活の後現在の新聞社長の椅子につくまで、いろ/\の出来事を手帳に書き留めたり、書類の整理をしたりした事は殆どなかった。今日急に必要が出来て或る書類を探し始めたのだが、二十分経っても更に見当らないので、気短の彼はそろ/\焦れて来た。
彼はもう探すのを止めようと思った。そうして書類を見たいと言った友人の顔を思い浮べながら、云うべき冒葉を口の中で呟いた。
「昨日一日探したけれども、見つからんかったよ。大した事じゃないから、君、どうでもえゝじゃないか」