幸徳 秋水

死生

一

私は死刑に処せらるべく、今東京監獄の一室に拘禁せられて居る。

嗚呼死刑! 世に在る人々に取っては、是れ程忌わしく恐ろしい言葉はあるまい、いくら新聞では見、物の本では読んで居ても、まさかに自分が此忌わしい言葉と、眼前直接の交渉を生じようと予想した者は一個もあるまい、而も私は真実に此死刑に処せられんとして居るのである。

平生私を愛してくれた人々、私に親しくしてくれた人々は、斯くあるべしと聞いた時に如何に其真偽を疑い惑ったであろう、そして其真実なるを確め得た時に、如何に情けなく、浅猿しく、悲しく、恥しくも感じたであろう、就中て私の老いたる母は、如何に絶望の刃に胸を貫かれたであろう。

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