芥川 竜之介

アグニの神

一

支那の上海の或町です。昼でも薄暗い或家の二階に、人相の悪い印度人の婆さんが一人、商人らしい一人の亜米利加人と何か頻に話し合つてゐました。

「実は今度もお婆さんに、占ひを頼みに来たのだがね、――」

亜米利加人はさう言ひながら、新しい煙草へ火をつけました。

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