薄田 泣菫
手品師と蕃山
手品といふものは、余り沢山見ると下らなくなるが、一つ二つ見るのは面白いものだ。むかし、備前少将光政が、旅稼ぎをする手品師の岡山の城下に来たのを召し出して、手品を見た事があつた。
一体大名や華族などといふものは、家老や家扶たちの手で、始終上手な手品を見せつけられてゐるものなのだが、備前少将は案外眼の明るい大名だつたので、用人達もこの人の前では、
「二二が六。」
と手品の算盤珠を弾いて見せる訳にはいかなかつた。で、少将は一度手品といふものが見たくてまたらなかつたのだ。
薄田 泣菫
手品といふものは、余り沢山見ると下らなくなるが、一つ二つ見るのは面白いものだ。むかし、備前少将光政が、旅稼ぎをする手品師の岡山の城下に来たのを召し出して、手品を見た事があつた。
一体大名や華族などといふものは、家老や家扶たちの手で、始終上手な手品を見せつけられてゐるものなのだが、備前少将は案外眼の明るい大名だつたので、用人達もこの人の前では、
「二二が六。」
と手品の算盤珠を弾いて見せる訳にはいかなかつた。で、少将は一度手品といふものが見たくてまたらなかつたのだ。