太宰 治
思案の敗北
ほんとうのことは、あの世で言え、という言葉がある。まことの愛の実証は、この世の、人と人との仲に於いては、ついに、それと指定できないものなのかもしれない。人は、人を愛することなど、とても、できない相談ではないのか。神のみ、よく愛し得る。まことか?
みなよくわかる。君の、わびしさ、みなよくわかる。これも、私の傲慢の故であろうか。何も言えない。
中谷孝雄氏の「春の絵巻」出版記念宴会の席上で、井伏氏が低い声で祝辞を述べる。「質実な作家が、質実な作家として認められることは、これは、大変なことで、」語尾が震えていた。
たまに、すこし書くのであるから、充分、考えて考えて書かなければなるまい。ナンセンス。