宮本 百合子
雨滴
此頃、自然美の讚美され出して来た事は、自然美崇拝の私にとってまことに嬉しく感じる事である。
どうして今まで、ああして、そうもかまわれずに片隅になげた様にされて居たものかしらんと思う。
静かに太陽の健な呼吸を聞き、月の深遠な光明に身をひたして居ると口にまでつくせぬ、複雑な美に打たれるのである。
日々を、心ならずもいやな事、心を悩ます事の多い中で暮して居るのであるから、どこの廃市にも、満ち満ちて居る自然美になつかしむ心さえあれば、何もことさらの金と時間を費さずとも、霊の洗われ、清められる慰めを得るのであるのに……。