芥川 竜之介
僻見
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この数篇の文章は何人かの人々を論じたものである。いや、それらの人々に対する僕の好悪を示したものである。
この数篇の文章の中に千古の鉄案を求めるのは勿論甚だ危険である。僕は少しも僕の批判の公平を誇らうとは思つてゐない。実際又公平なるものは生憎僕には恵まれてゐない、――と云ふよりも寧ろ恵まれることを潔しとしない美徳である。
この数篇の文章の中に謙譲の精神を求めるのはやはり甚だしい見当違ひである。あらゆる批判の芸術は謙譲の精神と両立しない。就中僕の文章は自負と虚栄心との吸ひ上げポンプである。