薄田 泣菫
西大寺の伎芸天女
私は西大寺をたづねて、一わたり愛染堂の寶物を見終つた。
「寶物はもうこれでお終ひどす。」
と、ぶつきら棒に言ひすてたまま、年つ喰ひの、ちんちくりんな西大寺の小僧は、先へ立つてさつと廊下へ出掛けて行つたが、つとまた後がへりをして、
「あ、忘れとりました。此處におゐでやすのが、伎藝天女さんどす。」
薄田 泣菫
私は西大寺をたづねて、一わたり愛染堂の寶物を見終つた。
「寶物はもうこれでお終ひどす。」
と、ぶつきら棒に言ひすてたまま、年つ喰ひの、ちんちくりんな西大寺の小僧は、先へ立つてさつと廊下へ出掛けて行つたが、つとまた後がへりをして、
「あ、忘れとりました。此處におゐでやすのが、伎藝天女さんどす。」