芥川 竜之介
秋山図
「――黄大癡といえば、大癡の秋山図をご覧になったことがありますか?」
ある秋の夜、甌香閣を訪ねた王石谷は、主人の※(「りっしんべん+軍」、第4水準2-12-56)南田と茶を啜りながら、話のついでにこんな問を発した。
「いや、見たことはありません。あなたはご覧になったのですか?」
大癡老人黄公望は、梅道人や黄鶴山樵とともに、元朝の画の神手である。※(「りっしんべん+軍」、第4水準2-12-56)南田はこう言いながら、かつて見た沙磧図や富春巻が、髣髴と眼底に浮ぶような気がした。