田中 貢太郎

令狐生冥夢録

令狐※(「言+饌のつくり」、第3水準1-92-18)という儒者があった。非常な無神論者で、鬼神変化幽冥果報というようなことを口にする者があると、かたっぱしから折破して、決して神霊の存在を許さなかった。それに生れつき剛直で世に恐れるものがなかったので、傲誕自得という有様であった。

※(「言+饌のつくり」、第3水準1-92-18)の家の近くに烏老という富豪があった。その烏老はありあまる身分でありながら、強欲で貪ることばかりやっていたところで、ある夜急病が起って死んでしまった。※(「言+饌のつくり」、第3水準1-92-18)をはじめ烏老の不義を憎んでいる者は、いい気味だと思っていると、三日目になって甦った。人がその故を聞くと、烏老はこんなことを言った。

「わしが死んだ後に、家内の者が仏事をやって、しこたま紙銭を焚いたので、冥府の役人が感心して、それで送り還してくれたのだよ」

※(「言+饌のつくり」、第3水準1-92-18)は烏老のいうことを聞いて、馬鹿馬鹿しくもあったが、正直な男だけに、楮幣を焚いたがために貪欲漢を甦らしたということがぐっと癪に触った。彼は腹の立つのをじっと耐えて嘲笑を浮べて言った。

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