徳冨 蘆花

草とり

一

六、七、八、九の月は、農家は草と合戦である。自然主義の天は一切のものを生じ、一切の強いものを育てる。うつちやつて置けば、比較的脆弱な五穀蔬菜は、野草に杜がれてしまふ。二宮尊徳の所謂「天道すべての物を生ず、裁制補導は人間の道」で、こゝに人間と草の戦闘が開かるるのである。

老人、子供、大抵の病人はもとより、手のあるものは火斗でも使ひたい程、畑の草田の草は猛烈に攻め寄する。飯焚く時間を惜んで餅を食ひ、茶もおち/\は飲むで居られぬ程、自然は休戦の息つく間も与えて呉れぬ。

「草に攻められます」とよく農家の人達は云ふ。人間が草を退治せねばならぬ程、草が人間を攻めるのである。

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