中里 介山
大菩薩峠
一
お銀様は今、竜之助のために甲陽軍鑑の一冊を読みはじめました。
「某は高坂弾正と申して、信玄公被管の内にて一の臆病者也、仔細は下々にて童子どものざれごとに、保科弾正鑓弾正、高坂弾正逃弾正と申しならはすげに候、我等が元来を申すに、父は春日大隅とて……」
それは巻の二の品の第五を、はじめから、お銀様はスラスラと読みました。
中里 介山
一
お銀様は今、竜之助のために甲陽軍鑑の一冊を読みはじめました。
「某は高坂弾正と申して、信玄公被管の内にて一の臆病者也、仔細は下々にて童子どものざれごとに、保科弾正鑓弾正、高坂弾正逃弾正と申しならはすげに候、我等が元来を申すに、父は春日大隅とて……」
それは巻の二の品の第五を、はじめから、お銀様はスラスラと読みました。