浜尾 四郎

殺人鬼

美しき依頼人

1

二、三日前の大風で、さしも満開を誇つた諸所の桜花も、惨ましく散りつくしてしまつたろうと思われる四月なかばごろのある午後、私は勤先の雑誌社を要領よく早く切り上げて、銀座をブラブラと歩いていた。

どこかに寄つてコーヒーでも一杯のんで行こうか、いや一人じやつまらない、誰か話し相手はないか、とこんな事を考えながら尾張町から新橋の方に歩いて行くと、ある角で突然せいのひどく高い痩せた男にぶつかつてしまつた。

青空文庫の作品カード