林 不忘

平馬と鶯

鶯の宿

麗かな春の日である。

野に山に陽の光が、煙のように漂うのを見るともなしに見ながら、平馬は物思いに沈んで歩いていた。振り返ると、野路の末、雑木林の向うの空に、大小の屋根が夢の町のように浮んで、霞に棚引いているのが見える。平馬の藩である。行手にもまたほかの町が見えていたが、平馬はべつにそこへ行くためにこの春の野の一本道を辿っているわけではなかった。

ただどこというあてもなしに、歩きながら考え、考えながら歩くつもりでぶらりと家を出て来た平馬である。暖かい太陽の光を背中いっぱいに受けているうちに、いつしか半分眠っているような心持で、この方角へ足が向いたのだった。

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