林 芙美子
魚の序文
それだからと云って、僕は彼女をこましゃくれた女だとは思いたくなかった。
結婚して何日目かに「いったい、君の年はいくつなの」と訊いてみて愕いた事であったが、二十三歳だと云うのに、まだ肩上げをした長閑なところがあった。
――その頃、僕達は郊外の墓場の裏に居を定めていたので、初めの程は二人共妙に森閑とした気持ちになって、よく幽霊の夢か何かを見たものだ。
「ねえ、墓場と云うものは案外美しいところなのね」
林 芙美子
それだからと云って、僕は彼女をこましゃくれた女だとは思いたくなかった。
結婚して何日目かに「いったい、君の年はいくつなの」と訊いてみて愕いた事であったが、二十三歳だと云うのに、まだ肩上げをした長閑なところがあった。
――その頃、僕達は郊外の墓場の裏に居を定めていたので、初めの程は二人共妙に森閑とした気持ちになって、よく幽霊の夢か何かを見たものだ。
「ねえ、墓場と云うものは案外美しいところなのね」