楠山 正雄
夢殿
一
むかし日本の国に、はじめて仏さまのお教えが、外国から伝わって来た時分のお話でございます。
第三十一代の天子さまを用明天皇と申し上げました。この天皇がまだ皇太子でおいでになった時分、お妃の穴太部の真人の皇女という方が、ある晩御覧になったお夢に、体じゅうからきらきら金色の光を放って、なんともいえない貴い様子をした坊さんが現れて、お妃に向かい、
「わたしは人間の苦しみを救って、この世の中を善くしてやりたいと思って、はるばる西の方からやって来た者です。しばらくの間あなたのおなかを借りたいと思う。」