折口 信夫

はちまきの話

一

現在の事物の用途が、昔から全く変らなかつた、と考へるのは、大きな間違ひである。用途が分化すれば、随つて、其意味もだん/″\変化して来る。はちまきの話は、ちようど此を説明するに、よい例になるだらうと思ふ。

さて、はちまきは、どういふ処から出たか、と今更らしく言ふまでもないが、被りものゝはちまきに到るまでに、幾度かの変遷を経てゐる。はちまき・手拭ひなどは、もとは一つもので、更にはちまきは、頭に巻くものか、顔を隠すものか、ほゝかむりするのがほんとうか、と言ふ点になると、色々の問題が含まれてゐる。手拭ひは恐らく、以前は顔を隠すものと、手を拭ふものとの両方面があつたのが、だん/″\手を拭ふ方面へ進んで来たのかと思はれる。

私が沖縄へ行つた時撮つた、かつらやはちまきの写真があるが、誰でも此を見れば、かつらとはちまきとは関係のあるものだ、と考へるに違ひない。とにかく、今役者のつけるかつらと、昔の人が被つたかつらとは、同一の起原から出たものだと言ふことだけは訣る。

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