宮本 百合子

明るい海浜

一

陽子が見つけて貰った貸間は、ふき子の家から大通りへ出て、三町ばかり離れていた。どこの海浜にでも、そこが少し有名な場所なら必ずつきものの、船頭の古手が別荘番の傍部屋貸をする、その一つであった。

従妹のふき子がその年は身体を損ね、冬じゅう鎌倉住居であった。二月の或る日、陽子は弟と見舞旁遊びに行った。停車場を出たばかりで、もうこの辺の空気が東京と違うのが感じられた。大きな石の一の鳥居、松並木、俥のゴム輪が砂まじりの路を心持よく行った。いかにも鎌倉らしい町や海辺の情景が、冬で人が少いため、一種独特の明るい闊達さで陽子の心に映った。

「冬の鎌倉、いいわね」

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