宮本 百合子

高台寺

三等の切符を買って、平土間の最前列に座った。一番終りの日で、彼等の後は棧敷の隅までぎっしりの人であった。一間と離れぬところに、舞台が高く見えた。

やがて囃が始り、短い序詞がすむと、地方から一声高く「都おどりは」と云った。

「よういやさ」

揚げ幕の後で一種異様にちりぢりばらばらのような刺戟的な大勢の掛声がそれに応える。同時に、左右の花道から、鼓、太鼓、笛、鉦にのって一隊ずつの踊り子が振袖をひるがえして繰り出して来た。彼方の花道を見ようとすると、もう此方から来ている。華やかな桃色が走馬燈のように視覚にちらつき、いかにも女性的な興奮とノンセンスな賑わいが場内を熱くする。――

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