宮本 百合子

未開な風景

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みのえは、板の間に坐っていた。真暗な板の間であった。

みのえの前の瓦斯コンロだけが、暗闇の中で勢よく青い広い焔をあげている。その薄明りでみのえは自分の鼻の先と手を見ることが出来る。

自分の鼻の先、それからすべっこい熱い激しい瓦斯の焔。一心に見つめつつみのえは全身の注意であっちの話声をきいていた。あっちの部屋の襖をしめて、母親と油井が火鉢を挾んでいた。油井は、黒い髪を分け、和服の下に真白いソフトカラアのついた襯衣を着た男だ。彼は鼻にかかる甲高い声を出した。その夜は、低い声で、彼の心を蹴とばして他人のものになった女のことを母娘に話してきかせた。油井が最後の訣れにその女と小田原へ行ったというところへ来たとき、お清は、

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