宮本 百合子

二人いるとき

習慣になっているというだけの丁寧なものごしで、取次いだ若い女は、

「おそれいりますが少々おまち下さいませ」と引下って行った。

土庇が出ている茶がかった客間なので、庭の梧桐の太い根元にその根をからめて咲き出ている山茶花の花や葉のあたりを暖かく照らしている陽は、座敷の奥まで入って来ない。多喜子は、座布団の上で洋装の膝をやや崩して坐りながら、細い結婚指輪だけはまっている手をもう一方の手でこすった。床柱も、そこの一輪差しに活けられている黄菊の花弁の冷たささえも頬に感じられて来るような室の底冷える空気である。

暫くぽつんとしていると、廊下のあっちの方で、

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