宮本 百合子
杉垣
一
電気時計が三十分ちかくもおくれていたのを知らなかったものだから、二人が省線の駅で降りた時分は、とうにバスがなくなっていた。
駅前のからりとしたアスファルト道の上に空の高いところから月光があたっていて、半分だけ大扉をひきのこした駅から出た疎らな人影は、いそぎ足で云い合せたように左手の広い通りへ向って黒く散らばって行く。
「どうする、歩くかい」
宮本 百合子
一
電気時計が三十分ちかくもおくれていたのを知らなかったものだから、二人が省線の駅で降りた時分は、とうにバスがなくなっていた。
駅前のからりとしたアスファルト道の上に空の高いところから月光があたっていて、半分だけ大扉をひきのこした駅から出た疎らな人影は、いそぎ足で云い合せたように左手の広い通りへ向って黒く散らばって行く。
「どうする、歩くかい」