宮本 百合子
日は輝けり
一
K商店の若い者達の部屋は、今夜も相変らず賑やかである。まぶしいほど明るい電燈の下に、輝やいた幾つもの顔が、彼等同志の符牒のようになっているあだ名や略語を使って、しきりに噂の花を咲かせている。
けれども、変幅対と呼ばれている二人の若者は、いつもの通り、隅の方へ机を引き寄せて、一人は手紙を書き一人は拡げた紙一杯に、三角や円を描き散らしていた。「三角形BCEト、三角形DCFトノ外切円ノ交点ヲGトシ…………」
崩れるような笑声が、広い部屋中の空気を震動させて、彼のまとまりかけた考えと共に、狭い窓から、広い外へ飛び出してしまった。若者は苦々しそうに舌打をして、上気せた耳をおさえながら鉛筆を投げ出すと、立って向うの隅にいるもう一人の処へ行った。