リルケ ライネル・マリア

祭日

ミサを読んでしまつて、マリア・シユネエの司祭は贄卓の階段を四段降りて、くるりと向き直つて、レクトリウムの背後に蹲つた。それから祭服の複雑な襞の間を捜して、大きいハンカチイフを取り出して、恭しく鼻をかんだ。オルガン音階のC音を出したのである。そして唱へ始めた。「主に於いて眠り給へる帝室評議員アントン・フオン・ヰツク殿の為めに祈祷せしめ給へ。主よ。御身の敬虔なる奴僕アントニウスに慈愛を垂れ給へ。」

ベンチの第一列に腰を掛けてゐたのが、此時立ち上がつて、さも感動したらしく鼻をかんでゐる男がある。八年前に亡くなつた「敬虔なる奴僕」の弟で、スタニスラウス・フオン・ヰツクと云ふのである。

祈祷が済むと、現に族長になつてゐるスタニスラウスが、先頭になつて席を起つた。その跡には、薄暗いベンチから身を起して、喪服を着た数人の婦人が続いた。

街へ出て、スタニスラウスは妹のリヒテル少佐夫人に臂を貸して、並んで歩き出した。その他の人々は二人づつの組を作つて、其跡に続いた。

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