夢野 久作

路傍の木乃伊

私は遠からず路傍の木乃伊になってしまいそうな気がする。口をポカンと開いた……眼の前の空間を凝視した……。

私は中学を卒業した切り上の学校に行かないが、その中学時代が小説の耽読時代であった。漱石、蘆花、紅葉、馬琴、為永、大近松、世阿弥、デュマ、ポー、ホルムズ、一千一夜物語、イソップなぞ片端から読んだ。二葉亭、涙香、思案外史、鴎外なぞも漁った。

それから自然主義の勃興にぶつかった。

自然主義一流のコクメイな写実式の描写を、気の永い努力で無理に読み味わっては感心した。これが文学だな……と思って熱心に模倣し愛誦していた。絵でも音楽でも西洋風の写実主義のものを尊重した。とにかく西洋人の仕事を矢鱈に崇拝して、唯物個人主義的な観念に深入りして行った。

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