蘭 郁二郎
歪んだ夢
私は、学生時代からの不眠が祟って、つい苦しまぎれに飲みはじめた催眠薬が、いつか習慣的になってしまったものか、どうしてもそれなしには、一日も過すことが出来なくなってしまったのです。
ああ、私からは最早、『壮快な睡眠』は奪いさられてしまったのです。眠られぬ夜――それはどんなに苦痛なものだったでしょう。あの輾轉として、生暖かい床の上に、この体をもてあましている切なさ、苛立たしさ……ワッと大声で泣叫びたいような、地獄の苦しみなのです。それは健康な方には、とても想像も出来ないことでしょうけど、でも、眠られぬ病人が、たった一晩で、ゲッソリ窶れてしまうことで、いくらか私の言う苦しみをお察し下さるかも知れませんが……。
そして私は、魔薬のお蔭で、浅くはありましたが、日向水のように生温い、後味の悪い眠りではありましたが、どうやら続けて行くことが出来たのでした。
この、変窟な生活、不自然な眠りの中には、一寸想像も出来ないような、風変りな世界があるのです――それをお知らせしたいばかりに、このみじめな筆を執った訳なのですが――。