蘭 郁二郎

魔像

一

寺田洵吉は今日も、朝から方々職を探してみたが、何処にもないとわかると、もう毎度のことだったが、やっぱり、又新たな失望を味って、当もなく歩いている中、知らず知らずに浅草公園に出ているのであった。

――これは寺田の「淋しい日課」だった。郷里で除隊されると、もう田舎で暮すのがバカバカしくてならず、色々考えた末、東京のタッタ一人の叔父を頼って、家を飛出しては来たものの、叔父の生活とて、彼を遊ばせておくほどの余裕はなかった。そして、彼の淋しい日課は始まったのだ。

寺田は、溜息と一緒に公園へ出ると、なかば習慣的に瓢箪池に突出した藤棚の下に行き、何処かでメタン瓦斯の発生ような、陰惨な音を聴きながらぼんやりとして、あくどい色をした各常設館の広告旗が、五彩の暴風雨のように、やけにヒステルカルに、はたはたと乱れるのを見詰めていた。

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