若山 牧水
樹木とその葉
私は草鞋を愛する、あの、枯れた藁で、柔かにまた巧みに、作られた草鞋を。
あの草鞋を程よく兩足に穿きしめて大地の上に立つと、急に五軆の締まるのを感ずる。身軆の重みをしつかりと地の上に感じ、其處から發した筋肉の動きがまた實に快く四肢五軆に傳はつてゆくのを覺ゆる。
呼吸は安らかに、やがて手足は順序よく動き出す。そして自分の身軆のために動かされた四邊の空氣が、いかにも心地よく自分の身軆に觸れて來る。
机上の爲事に勞れた時、世間のいざこざの煩はしさに耐へきれなくなつた時、私はよく用もないのに草鞋を穿いて見る。