若山 牧水
樹木とその葉
くもり日は頭重かるわが癖のけふも出で來て歩む松原
三月××日
千本松原を詠んだなかの一首に斯んな歌があつたが、けふもまたその頭の重い曇り日であつた。朝からどんよりと曇つてゐた。
非常に急ぎの歌の選をやつてゐたが一向に氣が乘らない。五首見て一ぷく、十首見ては一服と煙草ばかり吸つていつの間にか晝近くなつてゐたところへ、近所の服部さんの宅から使が來た。庭の紅梅が過ぎかけたから見にいらつしやい、一緒にお晝をたべませうといふ事である。赤インキのペンをさし置いて早速立ち上つた。そして使の人の歸つて行くうしろからてく/\と歩いて行つた。