若山 牧水

樹木とその葉

一週間か十日ほどの豫定で出かけた旅行から丁度十七日目に歸つて來た。さうして直ぐ毎月自分の出してゐる歌の雜誌の編輯、他の二三雜誌の新年號への原稿書き、溜りに溜つてゐる數種新聞投書歌の選評、さうした爲事にとりかゝらねばならなかつた。晝だけで足らず、夜も毎晩半徹夜の忙しさが續いた。それに永く留守したあとのことで、訪問客は多し、やむなく玄關に面會御猶豫の貼紙をする騷ぎであつた。

或日の正午すぎ、足に怪我をして學校を休んでゐる長男とその妹の六つになるのとがどや/\と私の書齋にやつて來た。來る事をも禁じてある際なので私は險しい顏をして二人を見た。

『だつてお玄關に誰もゐないんだもの、……お客さんが來たよ、坊さんだよ、是非先生にお目にかかりたいつて。』

坊さんといふのが子供たちには興味を惹いたらしい。物貰ひかなんどのきたない僧服の老人を想像しながら私は玄關に出て行つた、一言で斷つてやらう積りで。

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