岡本 綺堂

中国怪奇小説集

第九の男は語る。

「わたくしは宋代の怪談総まくりというような役割でございますが、これも唐に劣らない大役でございます。就いてはまず『異聞総録』を土台にいたしまして、それから他の小説のお話を少々ばかり紹介いたしたいと存じます。この『異聞総録』はまったく異聞に富んだ面白いものでありますが、作者の名が伝わって居りません。専門の研究家のあいだにはすでにお判りになっているのかも知れませんが、浅学寡聞のわれわれはやはり作者不詳と申すのほかはございませんから、左様御承知をねがいます」

竹人、木馬

宋の紹興十年、両淮地方の兵乱がようやく鎮定したので、兵を避けて江南に渡っていた人びともだんだんに故郷へ立ち戻ることになった。そのなかで山陽地方の士人ふたりも帰郷の途中、淮揚を通過して北門外に宿ろうとすると、宿の主人が丁寧に答えた。

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