小酒井 不木

手術

×月×日、私の宅で、「探偵趣味の会」の例会を開きました。随分暑い晩でしたが、でも、集ったのは男の人が五人、女の人が三人、私を加えて都合九人、薄暗い電燈の光の下で、鯰の血のような色をした西瓜をかじり乍ら、はじめは、犯罪や幽霊に関するとりとめもない話を致しました。

「……それにしても九人というのは面白いですねえ。西洋の伝説にある妖婆は、九という数を非常に好むという話ですから」と、会社員で西洋文学通のN氏は言い出しました。いつの間にか私たちは怪談気分にひたって居たこととて、妖婆という言葉が、いつもより物凄く私の胸に響きました。

N氏は続けました。「シェクスピアのマクベス劇で、三人の妖婆が魔薬を煮るところは可なり恐しい思いをさせられます。その魔薬の成分の一つとして、子豚を九疋食った牝豚の血が、鍋の中へ入れられますが、あの無邪気に見える豚でも、共食いするかと思うと、何となく気味の悪いものですねえ……」

こういってN氏は、私たち九人が、恰も九疋の子豚で、今にも牝豚ならぬ妖婆が、私たちを食べにでも来そうな雰囲気を作り出しました。

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