佐左木 俊郎

指

一

彼女は銀座裏で一匹のすっぽんを買った。彼女のそれを大型の鰐皮製のオペラ・バッグに落とし込んで、銀座のペーヴメントに出た。

宵の銀座は賑っていた。彼女は人の肩を押し分けるようにしながら、尾張町の停留所の方へ歩いた。店を開きかけた露店商人が客を集めようとあせっている。赤、青、薄紫の燈光が揺れる。足音が乱れる。

「もしもし! 奥さん。」

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