太宰 治

眉山

これは、れいの飲食店閉鎖の命令が、未だ発せられない前のお話である。

新宿辺も、こんどの戦火で、ずいぶん焼けたけれども、それこそ、ごたぶんにもれず最も早く復興したのは、飲み食いをする家であった。帝都座の裏の若松屋という、バラックではないが急ごしらえの二階建の家も、その一つであった。

「若松屋も、眉山がいなけりゃいいんだけど。」

「イグザクトリイ。あいつは、うるさい。フウルというものだ。」

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